MOMENT

世界遺産である三池炭鉱で100年以上前に煙突や建物に使用されていた古い煉瓦を再利用して造られた築65年の米蔵。それを地方創生を目的としたカフェにリノベーションする計画。古い建造物に何も手を加えず、現代の法規をクリアすることは簡単なことではない。しかしながらこのカフェの命題である「地域に根ざす」を守り、不揃いの煉瓦や年季を醸す登り梁といった建築本来の姿を失わないように、排煙や採光などの建築法規のクリアに挑んだ。結果、内外は歴史ある煉瓦に覆われ天井には古い木梁、壁面にはコメの接触を避けるための木組み等、それぞれの時期に施された工事の蓄積、素材の痕跡が中途半端に顔を出す空間となった。そうした時代のパッチワークが居心地を高めてくれている。暗く寒かった蔵は採光窓と床暖房で快適な空間となり、白く残された奥の壁は、オープンなギャラリーとして地域の人々をつなぐ場となって空間に新しい痕跡を刻んでいく。 余計な装飾はせず、その時代その場所、その時間に合った空間を定着させ、時間と共に緩やかに変化していく土台を作ることがこのプロジェクトの命題であった。

ROOTH 2-3-3

2018
クライアント : 株式会社 Be The One
写真 : 荒木文雄