MOMENT

MOMENTが建築設計を担当し、2015年に竣工したロコギャラリー代官山。スキップフロアで構成された建築に展示空間とカフェが共存し、コンテンポラリーアートを身近に感じられる場所となっている。竣工から6年が経過し、カフェの部分改装と、地下に多目的スペースが新設されることになった。これまで以上にアート作品との関わりを高める目的から、設計コンセプトは「アートの拡張」。1階は展示室の白い壁をカフェに引き込み、両者の境界を曖昧にしてカフェにも違和感なく作品を展示できるように場を広げている。そもそも建築の設計段階でスキップフロアを採用したのは、縦に伸びる都心の建築において、フロアごとに断絶されることなく、常に各所の出来事や気配がつながっている状態を意図してであった。内装においても展示室とカフェをガラス1枚で仕切り、互いが密接な距離で関わり合うようにデザインしてある。その継ぎ目のない空間設計がアーティストに自由さを与え、展示室の枠にとらわれない表現に結実し、訪れる人にとってはコーヒーとアートを同時体感できる贅沢な体験になっていくだろう。新たな地下の多目的スペースも、それらの意図を踏襲してデザインを行った。普段はカフェの客席として機能する中で、アート作品の展示はもちろんのこと、トークショーなどのイベントや顧客に対する作品のプレゼンテーションスペースなど、用途を限定せずに様々な使われ方を誘発する場となっている。室内は僅かな光沢と柔らかい陰影を生む黒柿色(渋味のある深い茶色)の左官仕上げで、ぐっと落ち着いた雰囲気にし、一般的にネガティブな印象がつきまとう地下室において、敢えて地中に深く潜るような感覚を引き出したいと考えた。床は京都の土を使った三和土。手作業で叩いてつくられた地面は完全な平らではなく、自然そのままの豊かな表情で居心地を高めてくれる。奥に設えたキッチンはカフェのスイーツ作りや、軽食の提供、食のイベント、食とアートを絡めた企画に使われていくことから、室内には2つの可動壁を設けて用途に則したレイアウトを組みやすくし、幅3.5mに及ぶアイランドカウンターの天板は全体がスライドして跳ね出し、作品の陳列台からカフェカウンターに姿を変え、どんな企画にも対応するつくりとした。展示室の白い空間から一転、また異なる環境でコーヒーと食、アートを楽しんでもらう空間設計には、ホワイトキューブで味わいがちな緊張や敷居を取り払い、芸術と日常をシームレスにつなぐ役割が込められている。

LOKO GALLERY / CAFE

2022
クライアント : LOKO企画
写真 : 八坂麻里子